63歳男性 思い出を引きずらない遺品整理を

私は30以上勤めていた会社を昨年引退した、還暦を超えた男性です。仕事、仕事の生活で自分の人生を楽しむということをどこかに置き去りにしてしまった私はいまだに独り身です。一昨年までは母と同居していましたが、去年骨折が原因で入院。退院後もそのまま母は介護施設に転院したままになり、以後病院と施設を行ったり来たりという生活が一年続き、とうとう昨年に衰弱して亡くなりました。喜寿でした。
我が家は4人家族でした。築40年となる今のマンションには新築当初から住んでいます。30年ほど前に兄弟は結婚して家を離れて家庭を持ちました。父は持病のため既に亡くなっています。その後の30年は母と二人だけの暮らしです。仕事が忙しく家は寝るだけと私でしたので、家のことはすべて母が仕切っていました。
母の死によって今は完全な一人暮らしです。4人の家族が生活するために揃えられた家具は狭い部屋を圧迫していました。また天井や壁は黄ばみや湿気によるシミやそして所々にひび割れがありました。カーペットの汚れもひどく張り替えが必要でした。そこで思い切ってリフォームをすることにしました。
不用品を整理するところ始めました。もう使わない母の6畳の洋間からです。家具類の処分は業者にお願いします。事前に母の遺品整理を兄弟と連日行いました。
タンスには既に着なくなっていた着物や帯がきちんと整理されて収納されていました。引き出しの中にはバッグや古い宝飾品や時計が仕舞われていましたが、私はどれも見たことがありませんでした。位置どこでこんな高価なものをと思うものも出てきて驚きました。今までケチだと思っていた母がとは思えなかったのです。生真面目で倹約家の父の手前でしょう。父が亡くなった直後から旅行に行ったり習い事をしたりしていました。娘時代の母は結構活発であったようで、結婚後家族のために自制していたのだと初めて悟りました。
本が数冊出てきました。老化と認知症がテーマの本でした。
また私が幼少の頃の五月人形が大切に保管されていました。少しですが母と対話ができた思いです。
リフォームをきっかけにすべての家具や生活用品を処分し新調しました。自分の20年間の日記までも。整理を進めるうちに家族の思い出や母の影を引きずりたくないという思いが強くなってしまったのです。そのことに心残りはありませんが、綺麗になったこの部屋で母に暮らしてもらえたらと少し残念に思っています。