59歳男 大切な想い出は次の人の手に

50代後半の男性です。一人親の母親が亡くなり、実家に残された遺品について、何をその時考え遺品整理をしたかを書いてみたいと思います。

亡くなる前は、親が病気で不自由になったこともあって、それまで東京で暮らしていたのですが実家に帰ることになり、世間で言う介護をしていました。母は約2年間の自宅介護の後に病院で亡くなったのですが、本人は死期が迫っていることは自覚していたようで、最後の頃は不自由な身体でも起きてきて、一生懸命に身の周りの整理をしていました。「これもいらないかなぁ」と、まるで昔の想い出を懐かしむように一つ一つの物をゴミ袋に入れていく時のその姿は、眺めているこちらも心が辛くなりました。だって母にとっては大切な物だったからこそ、今まで大切に手元に置いていたのですからね。それを捨てるという行為がどれほど辛いものか。たぶん自分に負担をかけないための心遣いだったと思います。そうして少しづつやってはいたものの遺品を全部整理しきれるわけはなく、それらの大切な想い出を残したままに母は亡くなりました。

そしてひと通りの葬儀が終わり、49日も過ぎ、哀しみも少し癒えた頃からようやく母の遺品整理に取りかかりました。

母の遺品の主なものとしては、母の着ていた洋服、着物、アクセサリー。それらを入れる古い年代物の箪笥が数個。そして書道を趣味にしていましたので、たくさんの書道の掛け軸やガラス額に入った書。また洋服は、母が文化服装学院出身なこともあって、変わったものがたくさんありました。そして最大の遺品が、実家の建物と土地。結局自分の心情や将来のこともあって、田舎に住み続けるより都会にまた戻った方が良いと考え、実家と共にそれらの遺品も処理することを決心しました。

処理するに当たって考えたことは、ただ捨てるのではなくて、もし誰かに使ってもらえるのなら使ってもらいたいということ。捨てるのは余りにももったいないですし、買取屋さんに持っていけば二束三文。幸いそのとき時間はたっぷりとありましたから、そうであればヤフオクで売った方がよいのではないかと考え、箪笥も含めた全ての遺品をヤフオクで売りました。もちろん母が本当に大切にしていたもの、自分が母との想い出として取っておきたいものは、もちろん手元に残しました。

どのくらいかかったでしょうか?全部ヤフオクで売り切るのに。たぶん半年はかかったと思います。もちろんそれでも完全ではありません。売れ残ったものもあります。そういうものは小さいものは引っ越しの際に持ってきていて未だに持っていますし、大きなものはゴミとして処分してきました。母が好きだった洋服や着物や書の類もやっぱりどうしても処分しきれず、なるべく親戚の人に受け取ってもらえるものは受け取ってもらって、それ以外は全て持ってきています。

家と土地の方は幸い立地の良い場所にあったこともあって、価格を下げたらすぐに売れました。買う側からみればお得な物件だったと思います。若いご夫婦が買ってくださってとても嬉しかった。自分は子供を残せませんでしたから、その想いをその夫婦がきっとその土地で実現してくれるに違いないと。それまで家を売ること自体が母に申し訳ない気持ちでしたが、そうやって若いご夫婦が買ってくださったことで、子供の声がその場所に響くことにもなり、きっと母も喜んでくるだろうと。最後にその家を去る時は哀しさもあるものの何か清々しい気分にもなりました。

親が亡くなるというのは人生においてたった一度か二度起こる経験で、その悲しさは何にも増して強いものです。一つ一つの遺品をどうしてあげれば、その遺品が喜ぶのか、そして故人が喜ぶのか。遺品たちの行き先を十二分によく考えて、ベストな方法をとってあげてほしいと思います。